新興国株投資について調べると、
「長期で持てば報われる」
「成長国なのだから時間を味方につけるべき」
といった説明をよく目にします。
しかし実際には、
- 5年、10年と保有しても成果が出ない
- 含み損の期間が非常に長い
- 米国株との差が広がる一方
という経験をした投資家も多いはずです。
新興国株で長期投資がうまくいかないのは、
我慢が足りないからでも、投資姿勢が間違っているからでもありません。
そもそも、長期投資が機能する前提条件が米国株とは違うのです。
この記事では、新興国株で「長期投資」が難しくなりやすい理由を、
精神論ではなく構造と時間軸から整理します。
そもそも「長期投資」が成立する条件とは
長期投資が機能する市場の共通点
長期投資が比較的うまく機能してきた市場には、
いくつかの共通点があります。
- 企業利益が継続的に成長する
- 成長の果実が株主に還元される
- 資本市場のルールが安定している
こうした条件が揃うことで、
「時間をかける=リターンが積み上がる」構造が成立します。
米国株で長期投資が機能してきた理由
米国株市場では、
- 利益成長
- 配当や自社株買い
- 株主重視のガバナンス
が比較的明確です。
そのため、
長期で保有することで複利が効きやすい環境が整ってきました。
この成功体験が、
新興国株にも当てはまると考えられがちです。
新興国株で長期投資が難しくなる構造
成長の果実が株主に届きにくい
新興国では、経済が成長していても、
- 国策や雇用が優先される
- 国有企業の比率が高い
- 株主還元が限定的
といった理由から、
企業利益の成長が株主価値に直結しにくい場合があります。
GDPは伸びているのに、
株価指数は伸び悩む、という現象が起きやすいのです。
利益が再投資・還元されにくい
米国企業では一般的な、
- 高い資本効率
- 積極的な株主還元
は、新興国市場では必ずしも当たり前ではありません。
結果として、
時間をかけても複利が効きにくい構造になります。
時間が経つほど不利になる要因
インフレが実質リターンを削る
新興国は高成長と同時に、
高インフレになりやすい傾向があります。
名目上は成長していても、
- 実質購買力
- 実質リターン
は思ったほど増えていない、ということが起きます。
長期で見た場合、
このインフレは複利効果を静かに削っていきます。
通貨安の影響が積み重なる
②の記事で触れた通り、
新興国株のリターンは為替の影響を強く受けます。
短期的には偶然に見える為替変動も、
長期では傾向として表れやすくなります。
- 株価は横ばい
- 通貨は緩やかに下落
この組み合わせは、
長期投資ほど投資家に不利です。
指数が戻らない期間は珍しくない
新興国株では、
- 5年
- 10年
指数がほとんど回復しない期間が存在することもあります。
米国株のように
「待てばいずれ最高値を更新する」
という前提は、必ずしも成立しません。
長期投資がうまくいかない最大の理由は「人間側」にある
含み損の期間が長すぎる
新興国株の問題は、
下落幅よりも停滞期間の長さにあります。
- 売る判断もできない
- 買い増す判断もできない
結果として、
心理的に最もつらい状態が長く続きます。
米国株との比較がストレスになる
同じ期間に、
- 米国株は堅調
- 新興国株は低迷
という状況が続くと、
機会損失への後悔が生まれます。
これは投資判断を鈍らせる大きな要因です。
「信じ続ける理由」が薄れていく
長期投資には、
「なぜ持ち続けるのか」という納得感が必要です。
新興国株では、
- 成長ストーリーが変わる
- 情報が減る
- 市場への関心が薄れる
ことで、
保有を正当化する理由が失われやすくなります。
それでも新興国株を長期で持つなら必要な前提
期待リターンを下げておく
新興国株を長期で保有するなら、
最初から過度な期待を持たないことが重要です。
米国株と同じ成果を求めると、
ほぼ確実に失望します。
ポートフォリオ内の役割を限定する
新興国株は、
- 主役
ではなく、 - 補助的な存在
として位置づける方が現実的です。
この考え方は、
④(ETF)や⑤(割合)の記事につながります。
「持ち続ける」ではなく「付き合い続ける」
長期保有=放置、ではありません。
- 定期的な見直し
- 環境変化への対応
- 売却も選択肢に入れる
こうした姿勢が、新興国株では重要です。
新興国株に向いている現実的な時間軸
永久保有は前提にしない
新興国株では、
期限を決めない長期投資はリスクが高くなります。
中期(数年)での管理が現実的
- 数年単位で評価
- 想定とズレたら調整
このように、
管理しながら付き合う方が合理的です。
まとめ
新興国株で長期投資がうまくいかないのは、
珍しいことではありません。
- 市場構造
- インフレ
- 為替
- 人間の心理
これらが重なり、
「時間を味方につける投資」が成立しにくいからです。
構造を理解したうえで使えば、
新興国株は危険な資産ではありません。
次の記事では、
新興国ETFがなぜ指数通りに儲からないのかを、
商品レベルで整理します。
