ビジネス英語を身につけるためのトレーニングとして、
今や圧倒的な知名度を誇る
「シャドーイング(聞こえてきた英語のすぐ後ろを影のように追いかけて発音する練習法)」。
「リスニング力を上げるなら、とにかくシャドーイングが良い」と聞き、
早速挑戦してみた、という方は多いのではないでしょうか。
しかし、いざやってみると、
「ネイティブのスピードに全くついていけない」
「呪文のように口をモゴモゴ動かしているだけで、本当に意味があるのか分からない」 と、
早々に挫折しそうになってしまうケースが少なくありません。
実は、私もその一人でした。
限られた時間の中で最大の効果を出したい社会人が、
シャドーイングの恩恵を100%受け取るために、実はその前段階として強くおすすめしたいトレーニングがあります。
それが、「ディクテーション(聞こえてきた英語を書き取る練習法)」です。
それも紙とペンではなく、「パソコンのメモ帳を使って、キータッチで行うディクテーション」です。
今回は、なぜこれが効果的なのか、その理由をシェアします。
なぜ、いきなりシャドーイングをやると効果が薄いのか?
シャドーイングが上手くいかない根本的な理由は、
厳しい言い方をすれば「そもそも聞き取れていない音は、正しく発音できないから」です。
流れてくる英文に対して、なんとなく耳に残った輪郭だけを真似して口を動かしていても、
自分が「どの単語を聞き取れていて、どの単語を聞き逃しているのか」の境界線が曖昧なまま進んでしまいます。
実務に例えるなら、
「自社の業務のどこにボトルネック(課題)があるのか分からないまま、
とりあえず業務自動化ツールを導入して空回りしている」ような状態です。
まずは「自分がどこを聞き取れないのか」という課題を正確に洗い出すこと。
そのための最強のツールがディクテーションです。
なぜ「紙とペン」ではなく「PCのタイピング」なのか?
ディクテーションというと、
学生時代の英語の授業のように「ノートにペンでサラサラと書き写す」イメージを持つかもしれません。
しかし、大人のビジネス英語において、それはあまりおすすめしません。
理由はシンプルで、実際のビジネスの現場で、英語をペンで手書きすることなど滅多にないからです。
海外からのメールへの返信、チャットツールでの連絡、財務データの入った資料作成など、
実務における英語のアウトプットは、ほぼ100%がキーボードを通したキータッチです。
であれば、英語学習の段階から「耳で聞いた英語を、キーボードを通して瞬時に文字にする」という、
実務と全く同じ神経の通わせ方(タイピング)で行うのが、最も合理的で実践的です。
スペルミスやタイピングの速度、タッチの正確さも含めて、すべてがそのままビジネススキルに直結します。
集中力を削がない、効率的なタイピング・ディクテーション術
PCのメモ帳を使ったディクテーションは、
紙とペンに比べて圧倒的にタイムパフォーマンスが良いのも特徴です。
私自身が実践している具体的な手順は以下の通りです。
- PCの画面に、標準の「メモ帳」と音声再生ソフトを並べて開く
- 1回1〜2分程度の、短いビジネスニュースや対話の音声を選ぶ
- 1〜2文ごとに音声を止め、聞こえた通りにキーボードで一気にタイピングする
- 3回聞いてもどうしてもスペルが浮かばない部分は、粘らずに空白のまま答え合わせへ進む
紙とペンのように「文字を書くスピード」に思考が引っ張られないため、
純粋に「音を聞き取る」「正しいスペルを打ち込む」という作業に100%の集中力を注ぐことができます。
また、間違えた部分の修正や、
テキストデータ同士の答え合わせ(スクリプトとの比較)も画面上で一瞬でできるため、
学習のテンポが非常に良くなります。
まとめ:自分の「現在地」をデータ化する
ディクテーションをキータッチで行うと、
画面上のメモ帳には「自分が今、正確にアウトプットできる英語」がリアルなデータとして残ります。
正解のテキストと見比べたとき、
「単語は知っているのに、音が繋がって聞こえたからタイピングできなかった」
「『an』や『of』といった、弱く素早く発音される音が完全に抜け落ちていた」
といった自分の弱点が、画面上でこれ以上ないほどクリアに浮き彫りになります。
課題がここまで可視化されて初めて、
次のステップであるシャドーイング(音の再現)をしたときに、
「よし、次はさっき打ち込めなかった部分の音を意識して発音しよう」という、
質の高いアプローチが可能になります。
流行りの洗練されたメソッドを形だけ真似する前に、
まずはPCのメモ帳を開いて、自分の耳と指先の感覚を同期させてみる。
地味ではありますが、実務に最も近いこのトレーニングこそ、
大人のリスキリングにおいて確実な一歩になると感じています。
