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教科書には載っていない「ROIC逆ツリー」を現場に浸透させる超・具体策

「経営陣の肝いりでROIC(投下資本利益率)を導入したものの、結局、経理と経営企画だけが毎月数字をいじっているだけで、現場は誰も意識していない……」

こんな悩みを抱えているバックオフィスのマネジメント層は非常に多いのではないでしょうか。

東証の「資本コストや株価を意識した経営」の要請以降、PBR向上やROICの導入に踏切る企業は急増しました。しかし、どれだけ立派な「ROIC逆ツリー(KPIツリー)」をエクセルで作って現場に配っても、それだけでは現場は1ミリも動きません。

20年以上の経理キャリアの中で、数々の財務改革と現場の反発に向き合ってきた私が、「教科書通りのROICツリーが失敗する理由」と、「現場の人間が明日から自発的に動き出すための超・具体策」をシェアします。

目次

なぜ、教科書通りのROIC逆ツリーは失敗するのか?

結論から言うと、「財務の言葉」のまま現場に投げているからです。

経理の人間なら、誰もが知っている以下の分解式。

$$\text{ROIC} = \frac{\text{NOPAT(税引後営業利益)}}{\text{売上高}} \times \frac{\text{売上高}}{\text{投下資本(運転資本} + \text{固定資産)}}$$

ここから「売上高利益率」と「投下資本回転率」に分解し、さらに「販管費率」や「棚卸資産回転日数」へとブレイクダウンしていくのが一般的なROIC逆ツリーです。

しかし、これをそのまま営業部長や工場長に見せて、「我が社の今期の目標はROIC 8%です。だから投下資本回転率を上げるために、運転資本を圧縮してください」と言ったらどうなるでしょうか。

現場の脳内はこうです。

「NOPAT?運転資本?……で、俺たちは明日から何をすればいいの?」

彼らは財務のプロではありません。日常の業務(売上を追う、納期を守る、不良品を減らす)で手一杯の現場に、使い慣れない財務用語のツリーを押し付けても、「経理がまた何か難しいことを言ってきた」とシャッターを閉められて終わりなのです。

現場を動かすための3つの超・具体策

ROICを絵に描いた餅にしないために、経理責任者が主導すべき具体策は以下の3つです。

① 現場の評価指標(KPI)まで徹底的に「翻訳」する

ツリーの末端の言葉を、財務用語ではなく「現場が毎日使っている言葉(アクション)」に完全に置き換えます。

  • 「運転資本の圧縮」「倉庫の滞留在庫を〇日分減らす」
  • 「売上債権回転日数の改善」「回収条件が120日サイトの顧客を、90日に交渉する」
  • 「固定資産効率の向上」「稼働率が〇%以下の設備を売却、または外部へリースする」

経理の仕事はツリーを作ることではなく、ツリーの末端を「現場のKPI」へ翻訳し、現場の評価制度(MBOなど)にまで組み込んでもらうよう、人事や経営陣とネゴシエーションすることです。

② 事業部ごとに「追うべき指標」を1つか2つに絞り込む

すべての部署に、ROICツリーの全項目を意識させてはいけません。情報過多で現場がフリーズします。部署の特性に合わせて、追うべき「レバー」を絞り込んで渡します。

部署渡すべきROICのレバー(KPI)
営業部「製品A(高粗利)の販売比率」と「売掛金の回収日数」
製造・購買部「原材料の調達リードタイム」と「仕掛品の保有量」
開発部「開発プロジェクトの期間短縮」と「特許などの資産化効率」

「あなたの部署は、この2つの数字だけを良くすることに集中してください。それが巡り巡って会社のROICを押し上げます」と伝えることで、現場の迷いがなくなります。

③ 経理が「伴走者」として事業部の会議に潜り込む

数字をシステムに入力させ、月次のレポートを送りつけるだけの「監視役」の経理は嫌われます。そうではなく、事業部の定例会議に経理の人間(または自分)が直接参加するのです。

そして、現場の泥臭い議論に対して、リアルタイムで財務のシミュレーションを提示します。

「今、営業課長が提案された『大口顧客への10%の値引き』ですが、これをやると我が部のROICは0.8%下がります。代わりに、値引きは5%に抑える形で、回収条件を30日早めてもらう交渉にすれば、ROICは維持できます。その交渉材料として、この財務データを使えませんか?」

ここまで現場に寄り添って初めて、現場は「ROICって自分たちの味方になる武器なんだ」と理解してくれます。

現場が動き出したとき、経理の仕事はもっと面白くなる

ROICが現場の共通言語になると、企業の体質はガラリと変わります。売上至上主義だった営業が「回収」を意識するようになり、工場は「過剰在庫」の恐怖を知るようになります。

そして何より、私たち経理・財務という仕事の景色が、一気に広がります。

過去の数字を正確に集計して決算書を作る。それはもちろんバックオフィスの大前提として重要な基盤です。しかし、そこから一歩踏み出して、「数字のロジックを使って、現場の仲間と一緒に会社の未来を少し良くしていく」。そんな伴走ができるようになると、経理という仕事の面白さは何倍にも膨らみます。

💡 試行錯誤を続けるための、私の「攻めのリスキリング」

私自身、20年以上経理をやっていますが、今でも毎日が試行錯誤の連続です。「どうすればもっとわかりやすく財務数値を伝えられるか」「どうすればバックオフィスの業務をテクノロジーでもっと効率化できるか」。

そんな問題意識から、このブログでは実務のノウハウだけでなく、私が現在進行形で取り組んでいる「ビジネス英語1000時間」の泥臭い学習のプロセスや、ITスキルを実務に活かすための挑戦についても、等身大のリアルとして記録しています。

完璧な正解なんてありません。ただ、昨日より少しだけ視野を広げて、自分の仕事を面白くしていくために。

同じバックオフィスで汗を流す皆さんと一緒に、新しい武器を少しずつ増やしていければ幸いです。

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この記事を書いた人

はじめまして、イダウユです。
上場企業の現役経理責任者。
バックオフィスの世界に飛び込み、経理・財務の実務において25年のキャリアを築いてきました。日々の決算業務や資金調達はもちろん、管理会計の仕組み構築、そして近年重要視されているROIC(投下資本利益率)をベースとした財務戦略の社内浸透など、現場の様々な局面に向き合ってきました。

過去の数字を追う経理から、現場の「伴走者」へ
キャリアの初期は、過去の数字を正確に集計し、決算書を作るという「守りの実務」に邁進していました。それはバックオフィスとして今でも最も重要な基盤だと信じています。

しかし実務を重ねる中で、本当に面白いのはその先にある「財務のロジックを使って、他部署の仲間と一緒に一歩先の未来を作っていくこと」だと気づきました。

ROICやWACCといった一見難解な財務指標を、営業や製造といった現場のリーダーたちにどう伝えれば、プロフェッショナル同士として納得し、同じ方向を向いて動いてもらえるか。日々泥臭く試行錯誤を重ねる中で得た「生きた実務の工夫」を、このブログではフラットに共有していきます。

なぜ今、現状に満足せず「攻め」のリスキリングなのか?
25年間、一つの専門性を磨き続けてきましたが、時代は激変しています。AIの台頭やDXの波の中で、これまでの知識にあぐらをかいていては、バックオフィスとしての価値は現状維持すら難しいという危機感があります。

そこで私は、自らの基盤である「財務分析」を軸に据えながら、全く異なる2つの武器を掛け算する挑戦を始めました。

ビジネス英語の習得
グローバルな視点での財務戦略やコミュニケーションに対応するため、1,000時間のコミットを目標に、現在進行形でガチ学習を進めています。

IT・テクノロジー(プログラミング)の活用
単なるExcel自動化の枠を超え、財務データの視覚化や、次世代のデジタル資産管理を見据えてUnity(C#)を用いた開発スキルを独学しています。

このブログで伝えたいこと
このブログは、「こうすれば成功できる」という偉そうなノウハウ本ではありません。私自身、今でも毎日のようにエラーを出し、頭を悩ませながら試行錯誤を続けている一人の実務家です。

同じバックオフィスで汗を流し、現状に満足せず「もっと自分の仕事を面白くしたい」「新しい武器を手に入れたい」と挑戦を続けている皆さんと、等身大の気づきや検証結果を共有し、刺激し合える場所にしたいと考えています。

完璧な正解はありません。昨日より少しだけ視野を広げ、組織の、そして自分自身の可能性を「攻め」の姿勢で広げていきましょう。
(免責事項)
当ブログは、投資に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、
特定の金融商品・投資行動を推奨するものではありません。
投資判断はご自身の責任において行ってください。

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